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お侍様や日々の事をポツポツと。

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引越し第六弾。
あと少しで引越しは終了です。
お題のみっつめ。
漸くそれっぽくなってきました。
おっさまはやっぱり負け軍師ということでv
前のお題から続いてます。








 * * * * * * * * * *





 《 03 年では大勝、恋は完敗 》







「カンベエ様」


“貴方様を、お慕い申し上げて居ります”


 その声が、ひどく己を縛り付ける。








 一回り以上違うであろう年の差。若き青年は想いを真っ直ぐに伝えてきた。
 偽ることの無い、真っ直ぐな蒼の眼差し。
 その瞳は曇ること無く己を見据えてくる。
 おもわず目を逸らしたことに内心舌を打った。

 それから、三日。

 暢気な鳥の鳴く声を耳にしながら、どうしたものかとため息をつく。
 思いを告げられたことよりも、今まで気がつきもしなかった己の鈍さを呪ってしまう。
 青年の想いはただの戯言ではないだろう。
 真っ直ぐな眼差しも、言葉も、ずっと前から認めていた想いに溢れていた。
 気づかなかった己を責めるでもなく、慈愛に満ちた瞳がどうにも健気で罪悪感が募る。
 しかして自分はどうなのか。
 青年のことが嫌いな訳ではない。
 むしろ、日々傍に仕える青年の存在は有難いと思っているし、自分には不可欠であると言える筈だ。

 だが、それが恋か否かは判断のしにくい所である。
 仕事の上で必要なだけだと、冷たく言ってしまうことだってできるのだから。

「……」

 棚の前で資料の出し入れをしている青年を伺う。
 横顔は至って平静。先日見受けられた情愛は欠片も出していない。
 慌てているのは自分だけか。
 それとも先日の一件は全て夢だったとでも言うのだろうか。

『返事は何年でも待ちます。待つのには慣れていますからね』

 そう告げられて、平静で居られる訳が無い。
 何年でも、とは。つまり何年先になっても傍に仕えているという事だろうか。
 主としては、そう言ってくれるのは嬉しい限りである。
 しかし、同じ男としては生殺しも同じことを強いるのは些か胸に引っかかるものがあるというもの。
 できるだけ早く返事をしてやりたい。
 だが、この歳になってよもや色恋沙汰で思い悩むとは思ってもみなかった。
 正直言って、対応に困る。

「カンベエ様?」

 突然こちらを振り返った青年に呼ばれ、咄嗟に目を手元の書類に移した。
 見ていたことがばれたのだろうか。青年は目を丸くすると小さく笑みを零した。

「さっきから書類と睨み合って、どうしたんですか?」

(…憎々しい)

 自分を見ていたことに気がついているだろうに、青年は尤もらしく近寄ってくる。
 何事も無かったかのように、あっけらかんと話しかけてくるものだから妙に腹が立った。
 おもわずジト目で見据えれば、青年は気にも留めずに笑みを絶やさず。

「………何だ、その締まりの無い顔は」

 仕方なしに、手にしていた紙を机に放って声をかければ、青年はにっこりと笑った。

「だってカンベエ様、この間からずっと私のことを考えていらっしゃるでしょう?」

「!」

 言われて、ゆっくりと顔に熱が集まっていく。
 確かに己は想いを伝えられた時からずっと青年のことを考え、青年を目で追っていた。

「作戦勝ちですな」

 ニッと笑い机に身を乗り出してくる青年を見上げる。
 そうして、その時になって漸く気づいた。
 青年は罠を張り、己はその罠に捕まったのだということに。

「私はね、カンベエ様。いつまでも良き副官で居る気は無いんです」

 何年でも待つと、言ったクセに。

「私も欲があり、我侭な一人の男であること、解って頂けましたか?」

 そんな事、想いを告げられたときから解っていた。

「性質の悪い古女房に捕まって、大変でしょうが諦めて下さいね」

 艶しく微笑む青年の白い掌が、そっと頬を撫でる。
 負けを認めようと開いた口は、優しく塞がれた。

(……また、負け戦か)

 想いを告げた真っ直ぐな瞳に宿る情愛の炎。

 あれは、獣の瞳だった。










**************************************************************

漸くそういうシーンが書けて一安心。とびとびでも話は繋がってるつもり!!(つもりかよ)
シチロージ書いてると鬼畜か変態かエロティックになります(何でだ)
カンベエ様書いてると乙女か天然誘い受けか自滅受けになります(更に何でだ)

「負け戦」は言葉自体が好きなのでカンベエさんに言わせたかった(言ってないし、思ってるだけだし)んですが、やっぱりシチは策士かな、と。何だかんだでカンベエ様に関しては手回し早そうだな、と。
んでもって宵の時にはもっと策士なんじゃないかな、と(ここらで止めとけ)
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